自動車業界で仕事してると、いい時と悪い時の“波”が激しいってのは、同業の皆さんならよく分かりますよね。
うちみたいな町工場は、その波の影響をまともに食らっちまう。
「来月の注文、半分になるから」。
ある日突然、電話一本でそんなこと言われたら、頭が真っ白になりますよ。
でも、社長である俺が止まるわけにはいかない。
従業員とその家族の生活がかかってますからね。
今日は、そんな突然の受注ストップに、うちの会社、山田精密工業がどうやって対処してきたか、町工場の親父としての本音を包み隠さずお話ししようと思います。
目次
なぜ受注が急に止まるのか?
そもそも、なんでこんなに急に仕事が止まっちまうのか。
長年この業界にいると、いくつか理由が見えてきます。
自動車業界の構造的な特徴
俺たちが作ってるのは、自動車を構成する無数の部品の一つ。
だから、完成車メーカーの生産計画が変われば、その影響はドミノ倒しみたいに下請けの俺たちのところにやってくるんです。
半導体が足りないとか、海外で売れ行きが悪いとか、俺たちにはどうしようもない理由で、仕事がいきなりなくなる。
これが現実です。
取引先の動向と生産調整の影響
メインの取引先が新しいモデルの生産に切り替えるタイミングとか、在庫を調整したい時とか。
そういう時も、発注がピタッと止まることがあります。
「山田さんとこの技術は信頼してるんだけど、ごめんな」なんて言われても、こっちは「はい、そうですか」としか言えないわけで。
悔しいですけどね。
季節要因と経済状況の変化
例えば、決算前は生産を抑える傾向があったり、逆に年末は駆け込みで忙しくなったり。
景気全体の動きももちろん影響します。
世の中が不景気になると、高い買い物である自動車は真っ先に買い控えられますから。
「うちの会社でもあった」過去の急ブレーキ事例
創業して25年、こんなことは何度もありました。
一番きつかったのは、リーマンショックの時かな。
昨日までフル稼働だった機械が、次の日には全部止まってる。
あの時の工場の静けさは、今でも忘れられません。
- 大手メーカーの海外工場トラブル
- 新車のリコール問題
- 取引先の経営方針の変更
どれも、こっちにゃ何の責任もない話。
でも、影響は全部こっちに来るんです。
まずやるべき“社長の確認リスト”
さあ、仕事が減ったと落ち込んでばかりもいられません。
社長がまずやるべきことを、俺なりにリストにしてみました。
売上と支払いのバランスを再点検
まずは、お金の確認。
これ、基本中の基本です。
入ってくるお金(売上)が減るんだから、出ていくお金(支払い)をどうするか。
材料の仕入れ、外注費、リース代、家賃…全部洗い出して、支払いを先延ばしにできるものはないか、すぐに確認します。
資金繰り表の見直しと想定シナリオ作成
毎月作ってる資金繰り表を引っ張り出して、最悪のシナリオを考えます。
「もしこの状態が3ヶ月続いたら?」「半年続いたら?」って。
怖いですけど、これやっておかないと、いざという時に本当に動けなくなりますからね。
備えあれば憂いなし、ってやつです。
従業員への対応と社内の空気づくり
これが一番気を使います。
従業員は、工場の稼働が減ってるのを見て、絶対に不安に思ってますから。
変に隠さず、正直に状況を話すようにしてます。
「今、会社はこういう状況だ。でも、みんなの雇用は絶対に守るから、力を貸してくれ」って。
そうすると、社内の空気も変にギスギスしないもんです。
「正直なところ」気持ちの整理も必要
社長だって人間ですからね。
焦るし、不安だし、夜も眠れなくなります。
でも、その不安を一人で抱え込まないこと。
俺は、妻に話したり、同業の仲間に愚痴をこぼしたりしてます。
そうやって、少しでも気持ちを落ち着かせるのも大事な仕事だと思ってます。
対応策① コストの見直しと抑制
仕事が減った時にまず手をつけるのが、コスト削減。
体力があるうちに、会社の贅肉をそぎ落とすんです。
固定費の棚卸しと削減ポイント
毎月必ず出ていく固定費は、聖域なく見直します。
【うちの会社で見直した固定費の例】
- 電気代: 工場の照明をLEDに変えたり、コンプレッサーのエア漏れを徹底的にチェックしたり。
- 通信費: 使ってない電話回線や、高すぎるネットプランはないか見直し。
- 保険料: 付き合いで入ってる保険がないか、内容をしっかり確認。
小さなことの積み重ねが、後で大きく効いてきます。
外注の見直しと内製化の検討
今まで外注してた作業を、社内でできないか検討します。
もちろん、品質が落ちちゃ元も子もないんで、慎重に判断しますけどね。
時間ができた今だからこそ、新しい技術を覚えたり、多能工化を進めるチャンスでもあるんです。
稼働時間の調整と柔軟なシフト運用
仕事量に合わせて、残業を減らしたり、勤務時間を調整したり。
これは従業員の協力が不可欠です。
だからこそ、普段からちゃんとコミュニケーションを取って、信頼関係を築いておくことが大事なんですよね。
従業員のことを考えると、一方的な押し付けは絶対にしちゃいけない。
「まあ、そんなもんです」で済ませない工夫
「コスト削減なんて、やれることはもうやってるよ」って思うかもしれません。
でも、「まあ、そんなもんです」で思考停止しちゃダメなんです。
現場の従業員から「もっとこうしたら効率良くなるんじゃないですか?」なんてアイデアが出てくることもあります。
そういう声に耳を傾けるのが、社長の役目だと思ってます。
対応策② 資金調達の現実的選択肢
コストをいくら削っても、キャッシュがなけりゃ会社は潰れます。
いざという時のために、資金調達の方法を知っておくのは本当に重要です。
銀行融資:実行までのスピードと課題
まずはメインバンクに相談するのが王道ですよね。
ただ、銀行の融資はとにかく時間がかかる。
書類を揃えて、事業計画を説明して…審査が通るまで1ヶ月以上かかることもザラです。
急に資金が必要になった時には、正直、間に合わないことが多い。
ファクタリング:緊急時の即戦力
そこで俺が使うようになったのが、ファクタリングです。
売掛金(これから入金される予定の売上)を買い取ってもらって、すぐにお金にする方法ですね。
初めての人向け!簡単な仕組み解説
- 1. 申し込み: ファクタリング会社に、請求書(売掛金)の情報を送る。
- 2. 審査: ファクタリング会社が、取引先の信用力を審査する。
- 3. 契約・入金: 審査が通れば契約。手数料を引かれた金額が、最短即日で振り込まれる。
借金じゃないから、決算書も傷つかない。
これが最大のメリットかもしれません。
「うちはこう使ってる」利用のリアル
俺が初めてファクタリングを使ったのは、従業員のボーナス時期と大口の材料仕入れが重なった時でした。
銀行融資を待っていたら、支払いが間に合わなかった。
手数料は正直、安くはないです。
でも、あの時の安心感をお金で買ったと思えば、必要な経費だったと断言できます。
今では、銀行融資とファクタリングを状況に応じて使い分けるのが、うちの会社のスタイルです。
その他の資金源:補助金・信用保証協会など
国や自治体の補助金も、使えるものはないか常にアンテナを張ってます。
あとは、信用保証協会に相談してみるのも一つの手ですね。
使える制度は、何でも使ってみる。その姿勢が大事です。
対応策③ 新しい仕事の種を探す
守ってばかりじゃ、ジリ貧になるだけ。
仕事が少ない時だからこそ、少しでも攻めの姿勢を持ちたいと思ってます。
取引先との関係を深掘りしてチャンスを掴む
「何か困ってることないですか?」
「うちで手伝えること、他にないですかね?」
メインの取引先に、こっちから声をかけてみるんです。
そうすると、「実はこんな部品で困ってて…」なんて、新しい仕事につながることが意外とあるんですよ。
地元企業や異業種とのつながりを活かす
うちは川口市にあるんで、地元の商工会議所とか、同業者の集まりには顔を出すようにしてます。
そういう場所での何気ない会話から、仕事のヒントをもらえることも多いです。
「営業は苦手」でもできる攻めの姿勢
俺もそうですが、町工場の社長って営業が苦手な人が多いですよね。
でも、立派な営業じゃなくていいんです。
- 自社のホームページを少し更新してみる
- 昔の取引先に「ご無沙汰してます」って電話してみる
- SNSで自社の技術をちょっとだけ発信してみる
できることからでいい。
一歩踏み出すことが重要なんです。
「この前こんなことがあって」成功・失敗エピソード
この前、付き合いのある金型屋の社長と飲んでたら、「今、人手が足りなくて困ってる」って話を聞いて。
「じゃあ、うちの若いの、少し修行に行かせますよ」って提案したら、すごく喜ばれて。
それがきっかけで、新しい加工の仕事を紹介してもらえたんです。
どこにチャンスが転がってるか、本当に分からないもんですね。
対応策④ 従業員との連携強化
会社が苦しい時こそ、従業員とのチームワークが試されます。
状況を共有してチームで動く
さっきも言いましたが、状況は正直に話す。
その上で、「この苦しい時期を、みんなで乗り切るぞ」っていう一体感を作ることが大事です。
社長が一人で抱え込んで、従業員が何も知らされずに不安なまま…っていうのが一番良くない。
スキルアップと改善活動の推進
仕事がなくて手が空いている時間を、どう使うか。
うちは、この機会に普段できない工場の整理整頓や機械のメンテナンス、若手の技術指導に時間を使うようにしてます。
「暇な時間」を「未来への投資の時間」に変える。
この発想の転換が、後で必ず生きてきます。
モチベーション低下を防ぐ工夫
仕事が減ると、どうしても従業員のモチベーションは下がってしまいがち。
だからこそ、社長が一番元気でいることが大事だと思ってます。
「大丈夫だ、俺に任せとけ!」って。
根拠のない自信でもいいんです。社長が前を向いていれば、従業員もついてきてくれるもんです。
「従業員のことを考えると」妥協だけでは済まない
給料を下げたり、休みを増やしたりするのは、最後の手段。
そうなる前に、やれることは全部やる。
従業員の生活を守るのが、社長の最大の仕事ですから。
その一線だけは、絶対に妥協しちゃいけないと思ってます。
対応策⑤ 自分自身の学びと成長
会社の状況が厳しい時って、社長自身が試されてる時でもあるんですよね。
「町工場の親父としては」経営者の意識改革
昔ながらのやり方だけじゃ、これからの時代は生き残れない。
俺ももうすぐ50歳ですが、新しいことを学ぶ姿勢だけは忘れないようにしてます。
ITとかAIとか、正直よく分からないことも多いですけどね。
食わず嫌いせずに、まずは話を聞いてみるようにしてます。
同業者との情報交換と連携
一人で悩んでても、いい考えは浮かびません。
俺は、信頼できる同業の仲間と定期的に情報交換してます。
「おたくはどう?」「うちはこうやって乗り切ったよ」
そんな生の情報が、何よりの薬になります。
勉強会・セミナーへの参加(最近の気づきも紹介)
最近、オンラインでやってる資金繰りのセミナーに参加してみたんです。
そこで、今まで知らなかった補助金の話とか、新しい資金調達の方法を知ることができました。
「知らないことは、存在しないのと同じ」
セミナーで講師が言ってたこの言葉が、グサッときましたね。
まだまだ勉強が足りないなと、痛感しました。
「勉強になりました」と言える機会を増やす
年を取ると、なかなか素直に「分かりません」「教えてください」って言えなくなるじゃないですか。
でも、そのプライドは捨てた方がいい。
分からないことは、素直に「勉強になりました!」って言う。
そうすると、周りもいろんなことを教えてくれるようになります。
いくつになっても、成長はできるもんです。
まとめ
自動車業界の“波”は、俺たち町工場の力じゃどうすることもできません。
でも、その波にただ流されるんじゃなくて、溺れないように泳ぐことはできるはずです。
- まずはお金の流れを正確に把握する。
- コストを見直し、会社の体力をつける。
- 銀行融資とファクタリングを賢く使い分ける。
- 仕事が少ない時こそ、社内整備と自分磨きのチャンスと捉える。
- 一番大事なのは、従業員との信頼関係。
これが現実です、なんて厳しいことも言いましたけど、諦めなければ道は必ず開けます。
うちみたいな小さな町工場でも、知恵と工夫で25年間やってこれたんですから。
この記事が、同じように苦しんでいる経営者の皆さんの、少しでもヒントになれば嬉しいです。
最後に、皆さんにも聞いてみたいです。
皆さんの会社では、こういう厳しい時をどうやって乗り越えてますか?
ぜひ、コメントで教えてください。