どうも、埼玉の川口で小さな町工場をやってます、山田です。
自動車部品の加工ってもんを、かれこれ25年くらい続けてきました。
今日は、うちみたいな中小企業、特に町工場をやってる人間なら「あるある」って頷いてくれるであろう、「支払いサイト」の話をしようと思います。
「支払いサイト90日」って言葉、聞いたことありますか?
これが、うちみたいな会社の資金繰りにどれだけ重くのしかかってくるか。
今回は、手数料の話なんかも含めて、包み隠さず、町工場の親父のリアルな視点で全部お話ししますんで、最後まで付き合ってもらえると嬉しいです。
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目次
支払いサイト90日って、どういうこと?
「支払いサイト90日」ってのは、簡単に言うと、うちが品物を納めてから、その代金がお客さんから振り込まれるまで、まるまる3ヶ月かかるってことです。
いや、本当に長い。
取引先の都合と下請けの現実
うちの主な取引先は、自動車部品メーカーさんです。
大きな会社ほど、この支払いサイトが長くなる傾向があるんですよね。
「山田さんとこの技術は信頼してるから」なんて言われると嬉しい反面、支払い条件の話になると、こっちも強くは出られない。
それが下請けの現実ってもんです。
法律で「60日以内に払ってね」ってルールがあるのは知ってます。
でも、「昔からの慣習でさ」なんて言われちまうと、なかなか「法律が…」とは言えないのが正直なところです。
資金繰りへのインパクト
考えてみてください。
うちは品物を作るために、先に材料を仕入れなきゃいけない。
この材料費は、だいたい翌月末には払わなきゃならないんです。
でも、売上金が入ってくるのは3ヶ月後。
この間、会社の金庫は出ていくばっかりで、入ってくるものがない。
これが、じわじわと会社の体力を奪っていくんです。
なぜ「90日」になってしまうのか
お客さんも、そのまたお客さんからの入金を待ってうちに払う、みたいな流れがあるんでしょう。
業界全体の構造的な問題ってやつですかね。
こっちとしては、ただ真面目に良いものを作って納めてるだけなのに、なんでこんなに金の心配をしなきゃいけないんだって、思うこともありますよ。
まあ、それが経営者の仕事なんですけどね。
うちの資金繰りカレンダー
これが、うちの会社の典型的なお金の流れです。
見てるだけで胃が痛くなる人もいるかもしれません。
月 | 出来事 | お金の動き |
---|---|---|
4月 | 新規の仕事を大量受注!材料を仕入れる。 | ▲ 材料費(現金払い) |
5月 | 従業員みんなで頑張って製品を加工・納品。 | (お金の動きなし) |
6月 | 従業員への夏のボーナス支払い。 | ▲ ボーナス支払い |
7月 | やっと4月分の売上が入金される。 | ▲ 売上入金 |
どうです?
4月に仕入れた材料費を払って、6月には従業員にボーナスを払って。
でも、その売上が入ってくるのは7月の末。
この間、会社の金庫は空っぽに近づいていく一方なんです。
材料費は前払い、売上は3か月後
このタイムラグが、本当にきつい。
特に、大きな仕事が入った時ほど、先に出ていく金も大きくなる。
嬉しい悲鳴とは、まさにこのことです。
月ごとの資金需要と支出の流れ
毎月の給料や社会保険料、工場の家賃、光熱費は待ってくれません。
それに加えて、
- 6月、12月: ボーナス
- 8月: 労働保険の支払い
- 定期的に: 法人税や消費税の支払い
こんな感じで、定期的に大きな支出の山がやってくるんです。
常にカレンダーとにらめっこですよ。
ファクタリングとの出会いと変化
そんな資金繰りに追われる毎日だったんですが、転機が訪れたのは2022年の夏でした。
初めて使った時のこと(2022年夏)
忘れもしません。
一番大きな取引先からの支払いが、急に「悪いけど、もう1ヶ月延ばしてくれ」って連絡があったんです。
90日が120日に。
こっちは夏のボーナスを目前に控えてる。
銀行に相談しても「審査に時間が…」の一点張り。
正直、頭が真っ白になりました。
そんな時、同業者の仲間から「ファクタリングってのがあるぞ」と教えてもらったんです。
最初は「ファクタリング?なんだか怪しいな…」ってのが本音でした。
でも、背に腹は代えられない。
ネットで必死に調べて、3社くらいに相談しました。
そのうちの1社にお願いして、800万円の請求書を買い取ってもらったんです。
申込から4日で入金された時は、本当に涙が出るほど嬉しかったですね。
手数料6%は高いのか?安いのか?
その時の手数料は、確か6%でした。
800万円だから、48万円。
金額だけ見ると「高い!」って思いますよね。
俺も最初はそう思いました。
でも、もしあの時、資金がショートしてたら?
従業員にボーナスが払えなかったら?
会社の信用はガタ落ちで、もっと大きな損失が出ていたはずです。
そう考えると、あの48万円は、会社を守るための必要経費、いわば保険料だったんだなと、今では思っています。
現在の使い方と使い分けのコツ
今では、年に3〜4回くらい、計画的にファクタリングを利用しています。
ボーナス前とか、大きな設備投資で現金が必要な時とかですね。
銀行融資は時間がかかるけど金利が安い。
ファクタリングは手数料が高いけどスピードが命。
この二つの特徴を理解して、場面によって使い分ける。
これが、うちみたいな町工場の、賢い資金繰りのコツなんだと思います。
守りの経営から攻めの経営へ
ファクタリングを知ってから、うちの会社の経営は確実に変わりました。
資金繰りの不安がなくなったことで、守り一辺倒だった経営から、少しずつ攻めることができるようになったんです。
新しい設備投資ができた理由
去年、ずっと欲しかった最新のNC旋盤を導入しました。
1,500万円。
昔だったら、こんな大きな投資、怖くてできなかったでしょう。
でも、手元の資金に余裕ができたことで、「よし、やろう!」と決断できた。
この設備のおかげで、生産効率が上がって、新しい仕事も取れるようになりました。
若い職人を採用できた背景
この業界も、職人の高齢化が深刻でしてね。
うちもずっと、若い人材が欲しかったんです。
資金繰りが安定したことで、思い切って若手を2人、正社員で採用しました。
給料を払う余裕ができたのはもちろん、「この会社なら大丈夫だ」って安心感を持って働いてもらえる環境を作れたのが大きいですね。
受注拡大と取引先開拓のきっかけ
以前は「この仕事、受けたいけど、材料費の支払いがきついな…」なんて、受注を断ることもありました。
情けない話ですけど、それが現実でした。
今は違います。
「どんどん持ってきてください!」と胸を張って言える。
営業にも力を入れられるようになって、新しい取引先も開拓できました。
資金繰りのためにやってること、全部書く
ファクタリングはあくまで選択肢の一つ。
もちろん、日頃からやっていることもたくさんあります。
- 銀行融資との付き合い方
メインバンクとは、とにかく良い関係を続けること。
定期的に会社の状況を報告して、いざという時に相談しやすくしておくのが大事です。 - 信用金庫との定例ミーティング
地元の信金さんとは、月に一回は顔を合わせてます。
世間話の中から、新しい情報がもらえることも多いんですよ。 - 手形割引・設備リース・自己資金の使い分け
取引先から手形をもらった時は、すぐに割引に出すこともあります。
大きな設備はリースで月々の支払いを抑えたり、もちろん、内部留保(会社の貯金)を計画的に使うのが基本です。 - 資金繰り表のつけ方と見直しのタイミング
これはもう、基本中の基本ですね。
エクセルで簡単なものでも良いから、必ず作ること。
うちは毎月、月末に必ず見直して、3ヶ月先までの資金の動きを予測するようにしています。
それでも残る「支払いサイト90日」の壁
色々と工夫はしてますが、この「支払いサイト90日」という根本的な問題が消えるわけじゃありません。
小さな会社にとっての大きなリスク
取引先が一つでも倒れたら?
支払いがもっと遅れたら?
そのリスクは、常に背負っています。
体力のない小さな会社ほど、このリスクは大きいんです。
交渉できるのか?改善の余地は?
「サイトを短くしてください」なんて、喉まで出かかっても、なかなか言えません。
それで仕事がなくなったら元も子もないですから。
でも、最近は国も「60日以内に」って言い始めてるみたいなので、少しは期待してるんですけどね。
同業者との情報交換が救いになることも
結局、一番頼りになるのは、同じ苦労をしてる同業者の仲間です。
「おたく、どうしてる?」
「こんな方法があるらしいよ」
そんな情報交換が、何度も会社を救ってくれました。
正直なところ、これが現実です。
ここまで色々とお話ししてきましたが、これが町工場のリアルな資金繰りの現実です。
不安もありますよ。
夜、眠れなくなることだってあります。
でも、従業員とその家族の顔を思い浮かべると、逃げるわけにはいかないんです。
従業員の生活を守るためにできること
社長の仕事は、良い製品を作ることだけじゃない。
従業員が安心して働ける環境を作って、その生活を守ること。
そのためには、使えるもんは何でも使って、会社を存続させなきゃいけない。
「怪しい」じゃなくて「使える」選択肢を増やす大切さ
昔の俺みたいに、ファクタリングを「怪しい」と決めつけて、選択肢から外してしまうのは、本当にもったいない。
大事なのは、正しい知識を持って、自分の会社の状況に合わせて「使える」選択肢を一つでも多く持っておくこと。
それが、今の時代を生き抜く中小企業の知恵なんだと思います。
まとめ
支払いサイト90日という厳しい現実。
その裏側には、うちみたいな中小企業の、日々の苦労と努力があります。
- 支払いサイト90日は、会社の資金繰りをじわじわと圧迫する。
- ファクタリングは、手数料はかかるが、緊急時に会社を救う強力な手段になる。
- 資金繰りの不安がなくなると、設備投資や人材採用など「攻めの経営」ができるようになる。
- 銀行融資やファクタリングなど、色々な選択肢を賢く使い分けることが重要。
もし、今まさに同じようなことで頭を抱えている経営者の方がいたら、伝えたいです。
一人で悩まなくていい。
世の中には、色々な解決策があります。
この記事が、あなたの会社の未来を切り開く、何か一つでもヒントになれば、こんなに嬉しいことはありません。